実は他人事ではない国保未納問題
国民健康保険(国保)は自営業者や年金生活者など、企業保険に加入していない人々が病気やケガの際に安心して医療を受けられるよう支え合う制度です。会社員の皆さんにとっては「関係ない」と感じるかもしれませんが、実は国保の未納問題は社会全体に影響を及ぼしています。保険料の未納が増えると制度全体の財政が悪化し、その結果、税金を投入するなど会社員の皆さんにも負担が及ぶ可能性があります。誰もが安心して医療を受けられる社会を維持するため、この問題の解決が急務となっています。
出典 名古屋市健康福祉局調べ
特に問題視しているのは、保険料納期限当月の収納率の低下です。名古屋市では、収納率が前年同月比で約0.74ポイント減少しており、これは換算すると3億円規模の未納増加に相当します。この背景には、ネット銀行が普及し、従来の口座振替方法に対応できない方の増加、銀行口座を持たない外国人住民の増加といった要素があります。また、コミュニケーション手段の変化を受けて行政からの案内物が確認されない、電話でのやりとりに抵抗感を持たれているなどの要因から必要な情報を十分に届けられないといった問題が発生しています。
○納期限当月分収納率(各年度2月末現在)
令和6年度 | 令和5年度 | 差 |
88.34% (口振76.29%,納付書12.04%) | 89.08% (口振77.32%,納付書11.76%) | △0.74 (口振△1.03,納付書0.29) |
○口座振替世帯割合(各年度2月末現在)
令和6年度 | 令和5年度 | 差 |
75.84% | 77.42% | △1.58 |
行政だけでは限界。現場の課題とこれまでの努力
これまで名古屋市は収納率の向上に向けて口座振替の促進、多言語対応の動画作成など、多角的な取り組みを行ってきました。特にSMSを活用した納付案内は令和5年度に初めて導入し、収納率を1.8%上昇させました。区役所職員は市民への直接的な声かけや個別相談を丁寧に実施し、制度への理解を深めてもらう努力を重ねています。また、外国人住民に対しても、多言語の案内資料や動画を作成し、制度理解と納付促進を図っています。しかし、こうした行政努力にもかかわらず収納率は改善されず、私たちも「従来の方法では限界がある」と感じています。
これまでの取り組み
制度変更の影響──焦る現場と新たな課題
こうした課題がある中、令和6年(2024年)12月には紙の保険証が完全に廃止され、マイナ保険証へ全面的に移行します。これまでは、保険料滞納者に短期保険証を発行し、定期的に直接相談することで未納を防いできました。しかし、今後この対面相談の機会がほぼ失われてしまいます。新たな対策や仕組みを構築せず制度変更を迎えると、収納率の低下や未納問題の悪化は避けられません。だからこそ、私たちは今、新しい対策の構築を急いでいるのです。
先進技術を活用した革新的な解決策を
私たちが目指すのは、従来の行政手法の枠を超えた革新的な解決策を創出することです。その鍵を握るのが先進技術の活用だと思っています。例えば、AIを用いて未納リスクを予測し、最適なタイミングでのフォローアップを実現する仕組み、多様な方法で未納者に対する催告を行う手法、多言語対応のリアルタイムチャットボットを活用した相談案内など、多彩な可能性が広がっています。
私たちの想像に及ばないアイデアもきっとあると思います。ぜひ企業の皆さんが持つ先進技術やサービスを活かして、「未納ゼロ」の社会を共に実現しましょう。皆さんの革新的で新しい視点からのご提案を心よりお待ちしています。